Kiss me baby,Wake me up! Vol.3

   1 2 3 4 5 6 7 8

 
「いただきます」
 左之助は目の前に並べられた美味しそうな匂いにヒクヒクと鼻をうごめかした。
 水をふき取りついでにフローリングの床をみんなきれいに拭き掃除したら、剣心が頭を撫でて褒めてくれたので左之助の機嫌はたちまち直った。
 そして目の前には焼きたてのパン(剣心が焼いた、胡麻入りのカリカリパンだ)、チキンの香草焼き、ふんわりツナオムレツ、シーザーサラダ、そしてちょっと焦げ臭いコーンスープ。裏ごしして焦げ目は取ってあったが、匂いだけは残ってしまった。
剣心はとっても料理上手だ。なんでも作れるし、なんでも美味しい。左之助にとっては剣心が作ったというだけで皿まで舐めたいくらいなのだが、その上すごく美味しいので左之助はもう剣心の作ったもの以外食べようとはしないほどだった。
 左之助は一番にスープに手を伸ばした。煮立っていたスープは熱くてやけどしそうだったが、一息に飲みこんだ。それで剣心を自分から取り上げたしかえしのつもりらしい。
  うまいうまいと連発していつものように左之助は驚くほどたくさん食べた。そして小食の剣心が自分の分を残すのを許さない。じいっと横で見張られて、仕方なく剣心は全部食べた。左之助からすれば、細くて華奢な剣心は心配でしょうがないのだ。
 綺麗に食べ終えた後、食器をディッシュウオッシャーに入れるのは左之助の仕事だ。
 剣心がひとりで暮らしていた時は必要無かったが、左之助が来てから汚れ物が増えて新しく買ったものだ。左之助が来てから買い揃えたり買い替えたりしたものを見たり使ったりする度に、剣心は心が暖まるような気がする。
  それから出かける準備をする。剣心は髪を高くポニーテイルに結い、少しウェーブをかけた。タートルネックのカットソーの上に、ヒステリックグラマーのゆるく編まれたレイヤーセーター、これはピンクとブルーで、胸には虹の刺繍がある。ゆるゆるに編んであるので重ね着される。下もヒステリックのジーンズで、継ぎはぎだらけのものだ。左之助には、ベルボトムのジーンズと、同じくヒステリックの、女の子のヌードをプリントしたシルバーのカットソーにナイキのスリッポンシューズ、そしてクロムハーツのチョーカーとブレスレットをバックにつめた。
 左之助はいつのまにか犬の姿になってうろうろとしている。剣心は左之助を呼び寄せ、豚毛の柔らかいブラシで丁寧にブラッシングしてやった。左之助は気持ちよさそうに目を細め、ごろんと横になって腹を出している。剣心はよしよしと腹をさすってやった。
 そろそろ出かける時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

FC2 キャッシング 無料HP ブログ(blog)
 
inserted by FC2 system