=鷹宮 椿
=佐倉 裕

 

   正面から攻めるか、搦め手で行くか。
     あの喰えなさそうな老人に自分がどこまで通用するだろうか。思案した揚げ句、数日前と同じように左之助は壊した錠前を商人に突き出した。
    「夕(ゆん)べちょいと箱に突き当りましてね。あんまり軽いんで面食らって中ァ見ちまったんですが、俺に空箱(からっぱこ)の番をさせるのぁ、どんな御了見です?」
     これは失礼と、相手は穏やかな笑みを浮かべた。
    「いつぞや、斬左さんが絡繰がひどい音を立てていたと仰言っていたので修理に出したのでございますよ。外目に判らぬように苦心して運び出したのですが、斬左さんがいらっしゃらぬでは、あの子がこの家におらぬと盗人どもに教えてやるようなもの。そこで、何も言わずにいつも通り来ていただいたので。ご気分を害されたなら謝ります」
     いつもながら饒舌で、人を逸らさぬ巧みさがある。さすがの左之助も、どこまでが真実でどこからが偽りであるのか見極めがつかない。
     もっとも、何もかもに欺瞞の匂いがしてはいる。盗賊から守る為と言いながら期限を一月と指定してきたり、盗賊除けとは建前だと言ってみたりしながら、ここでまた盗難の危惧を持ち出す。
    「いえ、そういったことでしたら」
     しかし、あっさり左之助は退いた。本来、雇い主の事情は詮索しない主義だ。
  こうも踏み込んでみたのは、人形と若者の情報を少しでも得たいが為だった。だが、このじじいには歯が立たなさそうだ。      
 我が家への道を辿りながら、左之助は眉を寄せる。あの男も、恐らく人ならぬ存在だ。一体彼らは何者で、そうして自分のこの焦燥感はなんなのだろう。
     見たい、触れたい、抱きしめたい。そうして、思うさまに貪りたい。その想いに胸が掻きむしられるようだ。
     だが、どちらを?
     人形と若者、そのどちらをそうしたいのだろうか。
     朝食を辞したせいでいつもより半刻早く歩む道は朝焼けの名残に彩られ、初めてあの男を見た日の夕暮れを思い出させる。
    「・・・・」
     左之助は、一本の路地を曲がって足を止めた。
    「お・・・めえ・・・」
     いつかの夕焼けと、似ていながら正反対の光の中にあの男が佇んでいる。螺鈿の瞳に左之助を映して。
     ふらふらと伸ばした左之助の手を擦り抜けるように、身を返して走り出した。
    「待て・・・待ってくれ!」
     ひどく足が早い。追いつきそうで追いつかない距離を保ちながら、路地を抜け、幾つもの角を曲がっていく。 
     もう何カ所目かの角を曲がった時だった。
    『へ・・・?』
     瀟洒な二階建ての一軒家があるきりの袋小路、そこに若者の姿は消えていた。
    『ここに入ったのか?』
     掛かっている表札を見る。
    「新井青空」とあった。
     躊躇わず戸に手をかける。ほかに手懸りはない。敷居を潜り、奥へ向かって声をかける。若い女が姿を見せた。髪を後ろへ長く垂らし、それに恥ずかしげに手を添えている。温和(おとな)しそうな、なかなかの美形だ。
    「済みません、まだ髪を結っていないもので・・・あの、どのようなご用件でしょう?」      
 早朝の客に向けられる眼差しはいかにも不審そうだ。
    「いや・・つかぬことを伺いますが、こちらに長い赤っ毛の、目の青い・・・」
     言いかけたのを女が遮った。
    「ああ、それでは仲村様のお使いの方ですね。宅は所用で留守にしておりますがじきに戻ります。どうぞお上がり下さい」
     仲村、というのは左之助の依頼人の姓だった。曖昧に返答をして上がりこむ。
    「絡繰の方はどこもおかしくなかったそうです。ご覧になられますか?」
     先に立って歩く女の言葉に、勢い込んで頷いた。どうやらここは、人形師の家らしい。
     仕事場になっている二階に通される。いかにも人形らしい造りかけの人形達や絡繰の機械に囲まれて、あの人形が、何故か場違いな感じで布団を掛けて横たえられていた。隣りの女性に聞こえるのではないかと思うほどに、心の臓が早鐘を打ち出す。
    「あの布団は?」
    「え・・あの、私が掛けました。その・・・ご存知でしょうけど、よく出来たお人形ですから・・・」
     頬を赤らめた女の言わんとしていることを、左之助は察した。
    「見ても、構いませんか」
    「ええ、それは・・・」
     承諾しながらも、落ち着かない様子で居心地悪そうにする。
    「俺ぁ、ここで青空さんを待たせてもらいますんで、どうぞご内儀、髪を結ってきておくんなさい」
     心情を慮り、自分でも女への効果をよく知っている、とっておきの笑顔で放っておいてくれて構わないと促す。折良く、階下から赤子の泣き声がした。
    「済みません、息子が目を覚ましてしまったようで・・後でお茶をお持ち致します」
     そそくさと去っていく背にお構いなく、と声を投げ左之助は布団に手を掛ける。暫くぶりの美貌をしげしげと見つめた。朝の光の中でも、やはり彼女は生きているようだ。布団が、呼吸のために上下していないことが嘘のように。
     胸がたまらなく熱い。
    「済まねえな。でも、あんたの一番綺麗な姿が見てえんだ」 
     布団を、震える手でそっとめくっていく。めくりながら、左之助の眉が不審げに寄せられた。
    『こいつぁ・・・どういうこった・・・?』
     曝された、下肢の淡い茂みまでが植え込まれた白い裸身は。
    『・・・男・・・?』
    「お待たせしました」
     不意に声を掛けられ、喧嘩屋斬左ともあろう男が、言葉通り跳ね上がるほどに肝を潰した。
     慌てて振り向いたそこに、人の善さそうな若い男が立っている。
    「あの・・仲村様のお使いの方ですよね?私が青空です。父の人形の絡繰は、別段問題ありませんでしたよ」
「どうなさいましたか?」
    青空は、放心したような相手を見て不審そうに声をかけた。
    「あ・・、こ、この人形、」
    「はい、お預かりしましてから早速調べましたが、何の問題も御座いませんでした。いつも通り、綺麗に掃除して油を指しておきました。しかし、これほどいい状態であれば、無理に歯車を抜いて動きを止めるのはかわいそうな気がいたします・・。」
    左之助は先の衝撃でまだ恐慌状態にあったが、相手が発した言葉にひっかかりを感じて頭を上げた。
    「なんだと?あんた、さっきなんて言ったんだ?」
    「ですから、きちんとお世話をいたしましたと・・」
    「そうじゃねえ!その後だ!!」
    「む、無理に歯車を抜いて、動かせないようにするのはかわいそうだと・・。いえ、ただの人形師のひとりごとでございます。どうかお聞き流しくださいませ。」
    左之助の剣幕にすっかりおびえてしまった青空は、後ずさった。自分が差し出がましいことを言って、左之助を怒らせてしまったと思っているらしい。左之助は身を引く青空に掴みかかる。
    「おい、この人形のカラクリは、わざと止めてあるのか?そうなんだな?!」
    「は、はいっ。仲村様からのご注文で、ずっと以前から、一番かなめの歯車を抜いて、カラクリを止めてございますっ。仲村様から、カラクリが動いたというので調べましたが、ピクリとも動くはずはございません。これは、ちゃんと『死んで』ございます・・!」
    左之助は歯軋りをした。自分の知らないことが多すぎる。
    「おい、この人形は、仲村の娘の人形なんじゃねぇのか?どうしてせっかく作ったカラクリを止めるんだ!」
    「そ、それは私は存じません。もしかしたら私の父が知っているかもしれませんが、その父も昨年他界いたしまして、私がこの人形のお世話を引き継いだのです。
た、ただ・・、」
    「何だ?さっさと言え!」
    「は、はい申しますっ。この人形は昔から恐ろしい言い伝えがございまして、・・人の命を狩る鬼だと・・」
    「鬼、だあ?」
    「詳しいことは存じません。人形のことは、仲村様から固く口止めされております。人形のことは、誰にもいうてはならぬと・・。」
    「言え!!」
    左之助が首を締め付けると青空はあっさり根を上げた。
    「あの人形は、死んだ仲村の娘を模ったのか?」
    「いいえっ、違います・・!仲村様には、生きたお子がおいでになったことはございませぬ。十年ほど前、人形をお手に入れてから、娘としてご寵愛されているのでございますっ。家や店のものには、人形を娘として扱わせて、いかにも娘がおいでのように・・」
    「それなのに、からくりを止めてあるのか」
    「からくりを動かせば、鬼が目覚めて災厄を招くと・・。」
    「最後にひとつきかせろ。その、かなめの歯車とやらは、一体何処にある」
    「私は存じませぬ!どうか、どうかお許しを・・!」
    左之助はこれ以上この男から聞き出せることはないと判断し、手を離した。
    青空はがっくりとすわりこんでしきりに息をついている。雲つくような大男から喉を掴みあげられていたのだ。繊細な彼には死ぬ思いだっただろう。
    「済まなかったな、脅かせて。迷惑ついでに、俺のことを黙っててもらえるとありがてえや。別に、人形を狙ってる盗人じゃねえよ。あんたを困らすこたしねえしもうここには来ねえ。」
    青空は、慌てて首を縦に振る。これ以上この男に首を締め上げられるのはごめんである。
    「じゃあな。」
    左之助は一度人形を見ると、そのまま背を向けて青空宅から出て行った。
    人形をあのままさらいたかったが、左之助にはまだ仕入れたい情報がたくさんあった。しばらくは仲村宅に出入りできる身でなければならない。
    そして、人形の失われた歯車。
    それを取り戻せば、何かの糸口になるような気が、左之助にはしていた。
    カタン・・。
    どこかでカラクリの廻る音が、聞こえたような気がした。
  
「命を狩る鬼、か・・・」
     万年床に寝転び、煤で黒ずんだ天井を見上げて左之助がぼんやりと呟く。人形も、あの男も、そんなふうには見えなかった。確かに異質であると感じはしたが、邪悪とは思えない。
    「?」
     自分の他は誰も居ないはずの部屋に、他人の気配を感じて左之助は首を巡らした。
    「・・・お・・・」
     目を瞠る。三和土
たたき)に、あの緋色の男。螺鈿の瞳が、今は朝の光を受けてぎやまんの透明な輝きを放っている。 左之助が手をのばす、彼が身を引く、同じ動作が再現される。
    「なんで・・・なあ、なんで逃げんだよ。俺に、なんか用があって来るんじゃねえのか?そうなんだろ?」
     左之助の言葉に身を引くのはやめたが、再びのばされた手に、悲しそうな顔で首を振った。
    「触っちゃいけねえのか?」
     問いかけにも首を振る。
    「触れねえ・・・のか?」
     今度はこくりと頷いた。
    「なんで・・・こんなにはっきり見えてて・・・」
     金色の産毛が、白い肌が、陽の光りに透けているのが判る。体温まで伝わってきそうだ。抱きしめたい。それが叶わぬまでもただ触れてみたい。
     恋しさに身が焦がれていく。
    「え?」
     若者の口が動いた。声は音にならない。左之助は言の葉を拾い損ねた。
    「もう一遍・・・」
     桜色の唇がゆっくりと動いて、言葉を紡ぐ。
     タ、ス、ケ、テ。
    「助ける?助けるって、何から・・・あのじじいのとこからか?」
     頷いて、更に言葉を重ねる。
     シ、ナ、セ、テ。
     ジ、ユ、ウ、ニ、シ、テ、ク、レ。
    「死なせるって、自由にするって、なんのこった。教えてくれよ、なあ。なんで俺なんだ」
     血の色の匂う指が、震えながら左之助に差しのべられた。握り返そうとして果たされずに終わる。昨夜のように、左之助の指が空を掻いた。若者が後ずさり、閉めたままの障子を抜けて、溶けるように消える。
    「おい!」
     裸足のまま飛び出し、丸に左の字を抜いた障子を壁の木舞いが飛び散る程の勢いで開け放つ。
    「わあっ!」
     突き当たって転んだ何かが、左之助の足元で悲鳴を上げた。見下ろすと、先程の人形師が眉をしかめて尻もちをついている。男の姿は既にない。左之助は手を貸して青空を助け起こした。
    「ああ、どうも。痛たた・・・どうかしたんですか?盗人でも?」
     青空の科白に左之助が苦笑する。
    「こんな貧乏長屋に盗るもんなんざありゃしねえよ。あんたこそどうしなすった。よくここが判ったな」
    「だって、その惡一文字。喧嘩屋斬左さんでしょう?そうと判れば探しようはあります」
    「違えねえ」
     屈託なく笑うと、思いがけない来客を部屋へ招じ入れた。敷きっ放しの布団を二つに折って、座る場所をつくる。
    「茶なんて上等なもん置いてねえからよ、酒でいいか」
    「いえ、お構いなく」
     青空が急いで首を振った。
    「で?」
     向かい合って腰を下ろし、左之助が促した。
    「斬左さん、あの子に随分ご執心でしたね。理由(わけ)をお聞かせ願えませんか」
    「・・・言っても信じやしねえよ」
     それでも、青空の真摯な眼差しに、左之助はここ数日の出来事をぽつりぽつりと話した。聞き終えて、青空は無言のまま思案顔だ。ややあって、思い切ったように口を開く。
    「あの子の・・あの人形の、少し詳しい来歴をお話ししましょう。私もまだ子供でしたので、人伝てで聞いたり、記憶を寄集めて推測したこともありますからどこまで正確か保証できませんが・・・」
     前置きして、青空は語り始めた。      
 人形が造られたのは十五年程前。依頼主は仲村のような豪商だった。政情は不穏だったが、それを利用して更に家財を殖やす才覚の持ち主だったらしい。
    「実在の方の姿を写したそうです。人斬り抜刀斎と呼ばれた幕末最強の人斬りで・・・依頼された方は攘夷派と関わりがあって、お店(たな)が江戸での拠点の一つになっていたそうです。それで抜刀斎も出入りしていたんでしょうね」
     衆道の嗜みのあった主人がその姿に焦がれて、赤空にあの人形を造ることを依頼した。
    「ああ、抜刀斎なら聞いたことある。あんな・・・優しい姿だったのか」
    「父に言わせると、日頃は抜き身の刃物のような方だったそうです。なにかの折りに見せる一番優しい姿を写したと・・・」
    「親父さん、抜刀斎にお会いなすったことがあったのかい」
    「ええ、父の本職は刀鍛冶だったんです。人形は手すさびに拵えていただけでした。だから、父が人形を造っていたことを知る人は殆どいません。それも来歴不詳ということでいらぬ因縁話をつけられて」
     人形を造る目的を明かそうとしない依頼主に赤空も当初渋っていたが、妻の病の高額な薬代を立替えてもらった義理もあり、とうとう断りきれなかったらしい。
    「それがね、あの子を手に入れて、その旦那がおかしくなってしまったそうなんです。唇(くち)を吸ったり、肌を撫でたり、その内食事もとらなくなって、あの子の側で亡くなられていたと・・・いえ、本当のところは知りません。ただ、その方が亡くなられてあの子が売りに出されたのは本当です。そして、あの子を手に入れた方々が相継いで亡くなられたのも本当です。そうして、仲村様は、あの子を手に入れた、七人目の方です」
     仲村があの人形を手に入れたのは十年前。五年で六人の人間が死んだその事実に、さすがに左之助も慄然とした。
 「それで・・、本物の抜刀斎は一体どうなったんだ?」
    「死んだ、と伝えられています・・。くわしいことは知りません。父が人形を作って、間もなくのことだったそうです」
    「死んだ・・のか」
    「ええ・・。それでますます、人斬り抜刀斎の伝説と合わさって、人の魂を狩る、と・・」
    「・・・・・・・」
    「父の人形が化け物扱いされて、悔しい思いはしているんです。でも確かにあの人形には不思議な所がある。あの出来も由来しているのでしょう。あの人形は、父の、いやどの人形師の作と比べてもまたとない傑作ですから。まるで今にも動き出しそうな・・。じっと見ていると、心が惑わされそうな気がいたします」
    畳をじっと見つめている左之助に、青空が遠慮がちに言った。
    「斬左さん、悪いことは言いません。あの人形にはこれ以上、関わらないほうがいいです。仲村は、あの人形のもたらす災厄の原因が人形を生かしておく事にある、といってカラクリを無理に止めております。彼の元であの人形は十年も、いわば心臓を抜かれた状態でおかれているのです。確かに他の持ち主と比べて格段に長い月日を無事に過ごしている。しかし・・、あの人形そのものでなくても、最近仲村家の回りは不穏です」
    「どういうこった?」
    「最近ますます仲村様のあの子に対するご執心が激しくなってきています。商いをそっちのけで、それはそれは高価な着物をつくってやったり、人形と部屋に閉じこもって出てこなかったり・・。お陰で家業は左前、ご禁制の品にまで手をおだしになっているそうです。家の者が人形をこっそり取り上げようとするのを恐れたり、誰かが人形を狙っていると思いこまれて・・」
    「それで俺が雇われたって訳だったのか・・」
    「ええ・・。それで、人形の来歴を知る数少ない者たちの間では、また人形の祟りだともっぱらの噂です。」
    「そうか・・。それで、人形は今は仲村の家に戻ってるのか」
    「はい。斬左さんがおいでになった後で、仲村様ご本人がわざわざおいでになって、また新しい、誂えの総絞りの着物を着せて連れてお帰りになりました。」
    厳しい表情で天井を睨む左之助に、青空は少しの逡巡を見せた後、言いにくそうに言葉を発した。
    「それと・・。この事はお話しないでもよろしいかと思ったのですが・・。」
    「何だ?」
    「実は・・」
    言いよどむ青空に左之助は先を促がす。
    「実は、あの人形なんですが・・、あの、先ほど私、最高の傑作だと申しました。斬左様もご覧になっておわかりになったはずです。あれほど精巧に作りこまれた人形はまたとございません。父は、大変細かい仕事を完璧にやり遂げる気質でしたが、あの人形を作る時は、まるで何かにとりつかれたようだったと、母が申しておりました
いやいや始めた仕事でしたが、作っているうちに釣り込まれたのでございましょう。実は・・ あの人形は、抜刀斎の体と、殆ど寸毫変わらず作られているのです。」
    「どうしてそんな事ができんだ?体を全部、抜刀斎に見せてもらったってえのか?」
    「抜刀斎は腕の立つ人斬りでございましたからそれほど頻繁にではございませんでしたが、怪我を負うと父が応急に手当てをしたことがあるそうです、その際に・・。怪我で臥せっていた時も世話をしたことがあるそうです」
    左之助は何故かイライラと畳をむしった。
    「それで?」
    「・・ですから、抜刀斎の体と同じで、人の体の有り様を全て模っているので・・、その、体に人を、受け入れる事が出来るようになっているのです・・。お分かりですか?」
    「そ、それって・・」
    「はい、その事が多くの者を執心させる鍵でございます。斬左様、あなた様はご存知ないでしょうが、あの人形のカラクリは、それはそれは見事なものなのです。息はおろか、涙を流す事さえ訳も御座いません。」
    左之助は青空の言葉にただ息を呑むばかりであった。
    「まさか・・」

 

 

 

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